Dino Crisis Wiki
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Dino Crisis prologue page

Dino Crisis is a novella by Benny Matsuyama. An adaptation of the 1999 video game, Dino Crisis, it was published within the DINO CRISIS OFFICIAL GUIDE BOOK.




Transcript

    アイビス島周辺の気流は、 いまにして思えば奇怪なほどに乱れていた。
    クーパーは、 もう幾度となく困難なミッションを完遂してきた歴戦の工作員である。 パラシュート降下にしくじるようなキャリアの持ち主ではなかった。 しかし、 何かの前兆か、 あるいは巨大な物理現象の揺り返しでもあるかのような乱気流は、 ヘリから飛び降りるわずかなタイムラグのあいだに急激に変化し、 彼を3人の仲間とはまったくちがう方向へと放り出したのだ。 もはや、 セールの制御による軌道修正が効かぬほどに――。
    クーパーが降下したのは、 潜入チームの集合ポイントから大きくはずれた密林のただなかであった。 予定の時間にたどり思くことはできそうにない。 仲間のひとり、 隊長格のゲイルから何とどやされるか、 それを思うだけで彼は憂鬱になった。 任務遂行を第一に考えるゲイルは、 決して彼を待ってなどくれないだろう。 できるかぎり迅速に作戦に復帰しなければならない。 この島の極秘施設で研究を行なっているという、 3年前の爆発事故で死亡したはずの天才科学者・カーク博士の奪還――それが、 彼ら恃殊部隊に与えられた指令であった。
    南海の隔絶地・アイビス島の夜気は亜熱帯特有の、 大地が蓄えた日中の熱気の名残と、 そしてたっぷりとした水分を含んだものだった。 そこに原生林の濃密な芳香が入り混じり、 マスク越しに呼吸する大気は息苦しいまでに重い。 道なきジャングルを進むストレスと焦りに、 クーパーの鼓動はいつになく早まっていた。

Sources

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